[書評] ChatGPTを便利に&賢く活用出来る!『ChatGPTを使い尽くす!深津式プロンプト読本』
生成AIをバリバリ使いこなして仕事の効率を爆上げしていきたいと日々考えていらっしゃる皆様、いかがお過ごしでしょうか。しんやです。
かくいう私も生成AIは活用してはいるものの、生成AIサービスをフル活用し、最大限の恩恵を得られる状態までには至っていないのが現状です。そんな中、より生成AIサービス(ここではChatGPT)を使いこなすための書籍が発売されるという噂を聞いて早速予約&購入、満足感を以て読了致しました。
当エントリでは、2024年08月09日に発売された深津 貴之氏の書籍『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本』の内容について紹介したいと思います。
会話形式で説明が進み、とても読み易い構成
書籍は全7章構成となっておりそれぞれのポイントについてまとめられているのですが、全ての章が著者である深津氏と、司会進行役の会話形式で進められている形となっています。これがすごい読み易くて、内容もとても分り易く頭に入ってきます。
また、ChatGPTを実際に会話の中で『こういう入力を行うとこういう感じで返ってきますよ』という感じで例示して見せてもくれるので、書籍を読んでいくだけでも(まぁ実際にはChatGPTを使ってみるのがベストではありますが)ChatGPTがそういう挙動をするものなんだな、というイメージを掴むことがで出来るようになっています。
章毎の簡単な説明
ここからは書籍の各章に関する簡単な説明、感想を述べていきます。
第1章 はじめに:ChatGPTに触れてみよう
第1章ではChatGPTに関する簡単な紹介を行っています。AIが盛り上がってきた背景、そんな中でChatGPTが台頭してきた状況について言及しています。
そしてごく基本的なChatGPTの使い方について、前述の通り実際にChatGPTを通じてやり取りをしている風の構成で例示してくれています。
書籍内で深津氏は『ChatGPTを活用する事で仕事の効率化が出来るのであればそれだけで元が取れる。有償化して利用しない手はない』と有償プランをオススメしています。確かにこの書籍を読んだ後だとそのコメントにも納得という感じです。『試しに一月だけでも...』といった期間限定でもアリかなと思いますので、まずはChatGPTの最大限のパワーを存分に味わってみてはいかがでしょうか。
第2章 ChatGPTと生成AIの基本理解
第2章では『そもそもChatGPTとは、生成AIとはどういったものなのか』という部分について簡潔な説明がなされています。言葉尻だけで捉えると『生成AIは何でもやってくれる万能のツール、サービスなんだ...!』って思いがちな側面もありますが、この章では
- ChatGPTは"確率で続きを書く機械"である
- 一般論を言いがちでクリエイティブが苦手
- ChatGPTも言ったことが100%真実という保証はどこにもない
と端的に・明快に説明・定義してくれています。『そういうもの』として上手く使っていきましょう、この書籍ではその上手い使い方を説明していきますよ、という流れになっています。
第3章 ビジネスシナリオでのChatGPT(基礎)
第3章ではChatGPTをビジネスの場面で使う場合、どういったところに役立てられそうか?という切り口で幾つかの代表的な例を挙げています。
挙げられたケースは『サマリーを作って』と『FAQを作って』、『検索してまとめて』の3つ。いずれもまずは簡単な問い掛けから始まり、返ってきた答えをブラッシュアップさせる問い掛けを続けて行うことで『ChatGPTとのやり取りで欲しい答えがより洗練されて返ってくる』様子を体験出来ます。
第4章 プロンプトの力を引き出す
章冒頭の説明でも『本書の1つのキモ』と紹介されている部分がこの第4章。
『深津式プロンプト』として紹介されている"プロンプトの書き方"について、次の第5章に次ぐページボリューム(紙書籍ベースで41ページ)を割く形で紹介されています。
ちなみに『プロンプト』というのは"AIとの対話やコマンドラインインタフェース(CLI)などの対話形式のシステムにおいて、ユーザが入力する指示や質問"の事を指します。
まず大前提として、ChatGPTに
- ロール、コンテキスト、制約条件
- 出力フォーマット、プロセス
を与えることについて述べており、これらの情報を与えられる事でChatGPTはその性能をフルに発揮してより精度の高い、我々が欲しい情報を返してくれるようになります。
章の後半では、上記を踏まえた上で実践的な手法、プロンプトがいずれも回答(例)を交えた構成で紹介されています。まさにこの部分は『仕事でどうやって使うと良い感じの情報が得られるか』に真正面から応えているところでもあるので、ここだけでも十分元が取れるんじゃないかな、と思いました。
- 一般的な実践方法
- よくある普通の使い方(One Shot Prompting)
- 出力のサンプルを与える(Few-Shot Prompting)
- 関連資料を渡してから作業させる(Information Retrieval)
- まず前情報をLLMに生成させてから作業させる(Generated Knowledge Prompting)
- 段階的に思索させる(Chain og Thought)
- 複数のアプローチを検討してから結論を出す(Tree of Thought)
- タスクに必要な行動と理由を考えさせる(ReAct(Reasoning + Acting))
- 深津式オリジナル編
- 足りない情報について大規模言語モデル(LLM)から質問させる(Proactive Prompting)
- まず一般論を聞き、その後に一般論でないものを引き出す(Common belief and)
- 今の出力を60点として、100点はどのようなものか考えさせる(Score Anchoring)
- 仮想のパラメータを定義する(Virtual Parameter)
- サンプルA,Bの直線を延長した先の答えを求める(Virtual Vectorization/Original)
第5章 ビジネスシナリオでのChatGPT
第4章の内容を発展展開させる形で、『ビジネスシナリオの中でChatGPTを活用するにはどういう風にすれば良いのか』を書籍内最大ボリューム(紙書籍ベースで78ページ)を割いて紹介しています。
紹介されているトピックは以下の通り。様々なユースケースでChatGPTを活用出来るということがこの一覧を眺めてみるだけでも伝わってきますね。前章同様、全てのトピックに関しても指示&回答例が記載されています。
- 文章の作成と修正〜テーマに沿った文章を作成する
- 文章の校正〜作成した文章をブラッシュアップする
- リサーチ〜情報収集のよりどころを探す
- レポート作成〜レポートの構成から執筆まで
- チャットとメンタリング〜ChatGPTをメンターにする
- トラブルシューティング〜トラブルへの対応を構造化させる
- プロジェクトの概要を作る〜プロセスとロードマップの作成
- 進捗管理〜タスクの詳細化と評価
- 事前検死〜プロジェクトの失敗を想定して分析する
- 教育カリキュラムを作る〜要件を検証してカリキュラムに仕立てる
- カリキュラムのレビューと具体化〜2日の研修プランに仕立てる
- インタビューのロールプレイ〜事前にインタビューをChatGPTと体験
- ブレインストーミング〜多方面からのアイデアの気づきを求める
- データからチャートを作る〜Excelファイルの内容を読み解きグラフ作成
- グラフ以外のデータ処理〜データの確認と集計
- インサイトを求める〜データを分析する
第6章 カスタマイズしたChatGPTを作る
ここまでの内容はChatGPTだけでなく数多展開されている生成AI全般に使える内容だったかと思いますが、この章に関してはChatGPT独自の機能に関する内容となります。ChatGPTの中で、自分なりに命令などをカスタマイズしたGPTを作れるという『GPTs』を使って、より効率の良い仕組みを作り上げる手順を説明しています。(※ちなみにGPTsを使う場合は有償版プランを契約する必要があります)
第7章 リスクの認識と管理
ChatGPTを含めた『生成AI』サービスの良い面、メリットだけがフォーカスされがちな部分がありますが、この書籍ではChatGPTを利用することで発生し得るリスクの可能性や、それらを回避する術についても言及しています。それがこの第7章です。
7.1『ChatGPTにおける"誤情報"とその対策』では以下のトピックについて言及がされており、
- ブラックボックス性
- ハルシネーション
- バイアス
- YLYM(Your Life Your Money)領域で使わない
また7.2『ChatGPT利用で考慮したいリスク』では
- 著作権問題
- データ保護とプライバシー
- 古いモデルの仕様
- コスト問題
などにも触れています。7.3『チェックしたいガイドライン』でも国や政府機関等が展開している情報リソースの紹介もされていますので、この章の内容についても組織やチームで認識を合わせて適切な対応を行っていきたいところですね。
第8章 組織での活用とさらなる応用
この書籍を手に取った人であれば第7章までの内容を読んで『よし、早速自分のチームや組織で展開して行こう!』となっていることでしょう。そんな読者を後押しする内容で結んでいるのがこの最終第8章です。
- 8.1『導入計画のステップ』
- 8.2『職員トレーニングとサポート』
- 8.3『チャット以外の活用に幅を広げる』
- 8.4『自社データとの連携』
という章立てで、どういったアクションを展開していけばいいのかという部分がそれぞれ案内されています。
まとめ
という訳で、深津 貴之氏の書籍『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本』に関するオススメ、紹介エントリでした。
著者の深津氏によるSNS補足もそれぞれ展開されていますので是非合わせてお読みください。書籍の威力、効果、恩恵をより大きく得られるかと思います。
私自身生成AIについては作る方は勿論、使う方も初心者レベルではありますが、そんな私でも『生成AIサービスを賢く便利に使うにはこうすれば良いんだ』というのがとても分りやすく理解出来ましたし、シンプルに『便利な使い方を習熟していく上でのガイドブック』として手元に置いておくだけでも十分に役立つ内容だなと思いました。オススメです!